こども性暴力防止法、社労士が関与すべきなのは「誓約書」と「就業規則」です。
2026年12月25日から、こども性暴力防止法が施行されます。
正式には、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。
学校、保育所、学習塾、スポーツクラブ、児童福祉施設など、こどもと接する機会が多い事業者に関わる法律です。
対象事業者は対応すべきことが多岐にわたりますが、その中で、社労士が特に関与すべきところがあります。
それが「誓約書」と「就業規則」です。
義務ではなくても、整備しない選択肢はほぼありません。
こども家庭庁の資料を見ると、誓約書や就業規則については、「整備することが適当」という表現が使われています。
つまり、全部が一律に義務という書き方ではありません。
でも、実務的には整備する一択だと思っていいです。
万が一、従業員が児童対象性暴力等に関わる問題を起こしたとします。
そのときに、誓約書もない。
就業規則にも書いていない。
採用時にも確認していない。
こうなると、会社として事後対応がかなり苦しくなります。
こどもを守るための制度なのに、会社側のルールが曖昧では話になりません。
だから、対象事業者は「やったほうがいい」ではなく、「やっておくべき」と考えたほうがいいのです。
まず整えるべきは、採用時の誓約書です。
誓約書で確認したいことは、大きく2つあります。
ひとつは、過去に特定性犯罪に該当する事実がないことです。
もうひとつは、今後も児童対象性暴力等に関わる行為をしないことです。
要するに、「過去」と「未来」の両方を確認するわけです。
ここを曖昧にしてはいけません。
面接で聞いたつもりだった。
履歴書に書いていなかったから大丈夫だと思った。
こういう運用は危ないです。
人が面接をする以上、聞き忘れは起こります。
履歴書に犯罪歴を書いていないからといって、それだけで安全とは言えません。
だから、誓約書として明確に確認しておく必要があります。
「聞かれなかったから言いませんでした」を防ぐためです。
誓約書を取る大きな意味は、後から「聞かれなかった」と言われるリスクを減らすことです。
経歴詐称というのは、基本的には、聞かれたことに対して嘘をついた場合や、提出書類に虚偽を書いた場合に問題になります。
逆に、会社が何も聞いていなかった場合、あとから「なぜ言わなかったのか」と責めるのは簡単ではありません。
だから、入社前に誓約書で確認しておくのです。
「過去に該当する事実はありません」
「今後も該当する行為をしません」
こう書面で確認しておけば、万が一虚偽があった場合、会社として対応しやすくなります。
もちろん、誓約書を取ればすべて安全という話ではありません。
でも、何も確認していない状態よりは、明らかにリスクを下げられます。
誓約書を取るなら、他の重要事項も見直しましょう。
今回の制度対応をきっかけに、誓約書全体を見直すのもいいです。
意外と、入社時の誓約書をきちんと取っていない会社はあります。
取っていても、内容が古いままになっていることがあります。
こども性暴力防止法に関する事項に加えて、会社として特に守ってほしいことも整理しておきましょう。
ハラスメントをしないこと。
反社会的勢力と関係を持たないこと。
会社の機密情報を守ること。
SNSで会社や利用者の情報を不適切に発信しないこと。
こういった項目ですね。
特に、こどもに関わる事業では、利用者や保護者との信頼がすべてです。
「うちは小さい会社だから、そこまでしなくてもいい」では済みません。
小さい会社ほど、一度のトラブルで信用が大きく傷つきます。
次に整えるべきは、就業規則です。
もうひとつ重要なのが、就業規則です。
こども家庭庁は、犯罪事実確認や防止措置を円滑に行うため、あらかじめ就業規則に定めておくことが適当な事項について、就業規則参考例を公開しています。
就業規則に書いておくべきポイントはいくつかあります。
まず、対象者の範囲です。
誰がこの法律に関する対象業務従事者になるのか。
ここを決める必要があります。
小さい事業者であれば、全員を対象にするような整理もあるかもしれません。
一方で、職種や業務内容によって分ける必要がある会社もあります。
ここは、会社ごとに判断が必要です。
参考例をそのままコピーするだけでは、実態に合わない可能性があります。
「やってはいけない行為」を明確にする必要があります。
就業規則には、児童対象性暴力等につながる不適切な行為についても定めておくべきです。
何が禁止されるのか。
事実確認が必要になった場合、従業員は協力する必要があるのか。
犯罪事実確認の結果、問題が分かった場合にどう対応するのか。
試用期間中に判明した場合はどうするのか。
こういった点を、事前に整理しておく必要があります。
神奈川県の案内でも、就業規則の見直し項目として、対象者の範囲、不適切な行為の範囲、試用期間中の解約事由、懲戒事由としての重要な経歴の詐称などが挙げられています。
ここは、かなり実務的に大事です。
トラブルが起きたあとにルールを作っても遅いです。
先にルールを作っておくから、対応できます。
懲戒規定は特に重要です。
就業規則でとくに大事なのは、懲戒の部分です。
懲戒は、就業規則に根拠がないとできません。
会社として「これは許されない」と思う行為があっても、就業規則に懲戒事由として定められていなければ、処分が難しくなります。
もちろん、多くの会社では「就業規則に違反した場合」や「これに準ずる行為があった場合」のように、広めの条文を入れていると思います。
ただ、こども性暴力防止法に関しては、できればピンポイントで条項を設けたほうがいいです。
児童対象性暴力等に関わる不適切な行為をしないこと。
特定性犯罪前科等に関する重要な経歴を詐称しないこと。
事実確認や防止措置に協力すること。
違反があった場合は懲戒対象になること。
こういったことを明確にしておきましょう。
「就業規則の何条何項に基づいて処分します」と言える状態にしておくことが大事です。
参考例の丸写しはおすすめしません。
こども家庭庁のサイトには、誓約書・内定通知書参考例や就業規則参考例などが掲載されています。
これは非常にありがたい資料です。
ただし、そのままコピーして使えば大丈夫というものではありません。
会社によって、事業内容が違います。
対象になる従業員の範囲も違います。
すでにある就業規則の構成も違います。
懲戒規定の書き方も違います。
既存の就業規則との整合性を見ずに貼り付けると、かえって読みにくくなります。
条文同士が矛盾することもあります。
担当者レベルで「どこまで入れればいいのか」を判断するのは、なかなか難しいと思います。
だから、ここは社労士に確認してもらったほうが安全です。
これは単なる法対応ではなく、保護者への信頼づくりです。
マーケティング的に見ても、この制度対応はかなり大事です。
学校、保育所、塾、スポーツクラブなどは、保護者からの信頼で成り立っています。
保護者が一番気にしているのは、「うちの子を安心して預けられるか」です。
どれだけサービス内容がよくても、ここに不安があると選ばれません。
だから、こども性暴力防止法への対応は、単なる労務管理ではありません。
事業者としての信頼づくりです。
「うちは法律に対応しています」
「採用時に誓約書を取り、就業規則も整備しています」
「こどもを守るための体制を作っています」
こう言えることは、保護者にとって安心材料になります。
逆に、ここが曖昧な事業者は、これから選ばれにくくなると思います。
対象事業者は、今すぐ確認してください。
12月25日施行ということは、準備期間はもう長くありません。
対象事業者は、少なくとも次の点を確認しておきましょう。
自社が対象事業に該当するか。
対象業務従事者は誰か。
採用時の誓約書を整備しているか。
内定通知書や募集要項の記載を見直しているか。
就業規則に禁止行為、協力義務、試用期間、懲戒規定などを定めているか。
既存の就業規則と矛盾していないか。
このあたりは、早めに見ておいたほうがいいです。
施行直前になってから慌ててやると、かなり雑になります。
こどもに関わる事業で、雑な制度対応は本当に危ないです。
まとめ
こども性暴力防止法は、2026年12月25日に施行されます。
対象になるのは、学校、保育所、学習塾、スポーツクラブなど、こどもと接する機会の多い事業者です。
社労士が特に関与すべきなのは、「誓約書」と「就業規則」です。
誓約書では、過去に特定性犯罪に該当する事実がないこと、今後も児童対象性暴力等に関わる行為をしないことを確認します。
就業規則では、対象者の範囲、禁止行為、事実確認への協力、試用期間中の対応、懲戒事由などを整備します。
どちらも、法律上の表現では「整備することが適当」という位置づけかもしれません。
でも、実務では整備しておくべきです。
万が一のときに、会社とこどもを守るためです。
そして何より、保護者から選ばれる事業者になるためです。
こどもを守る体制づくりは、信頼づくりそのものです。
対象になりそうな事業者は、今のうちに誓約書と就業規則を見直しておきましょう。
働き方をアセント(上昇)させるためにも、こういう準備は後回しにしないことです。
こどもを守る制度整備を後回しにしていませんか
アセント社労士事務所では、誓約書、採用書類、就業規則、懲戒規定の整備を通じて、事業者とこどもを守る労務体制づくりを支援しています。
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