労務コラム

「退職給付金」に注意!退職後に【数百万円】もらえるという広告を見たら、まず疑ってください

2026.06.11
退職給付金という広告への注意喚起

退職を考えている人に向けて、「退職給付金がもらえます」「最大数百万円を受給できます」という広告が出てくることがあります。

SNSを見ていると、最近、こういう広告、けっこう流れてきます。

すぐに下火になるかと思っていましたが、なかなかなくなりません。

ある業者のWebサイトを見てみると、漫画仕立てで「会社がつらい」「パワハラで限界」「でもお金がなくて辞められない」という不安に寄り添いながら、最後に「退職給付金で380万円受け取れることになりました」という流れで見せてくるものがありました。

かなり魅力的に見えると思います。

でも、ここは一度立ち止まってください。

まず大前提として、「退職給付金」という名前の公的制度はありません。

労働局も、退職給付金という名称の制度はないと明記し、「受給額が増える」「期間が延びる」という勧誘に注意するよう呼びかけています。

退職給付金の正体は、だいたい「傷病手当金」と「失業保険」です

「退職給付金」と聞くと、退職した人だけが受け取れる特別なお金があるように見えます。

でも実際には、多くの場合、健康保険の「傷病手当金」と、雇用保険の「基本手当」、いわゆる失業保険を組み合わせて見せているだけです。

傷病手当金は、病気やケガで働けない人の生活を支えるための制度です。

傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。

また、退職後も受け取るには、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があることや、資格喪失時に傷病手当金を受けている、または受ける条件を満たしていることが必要です。

つまり、本当に病気やケガで働けない人にとっては、非常に大切な制度です。

問題は、この制度を「お金を増やす裏技」みたいに見せている広告があることです。

サービスサイトの表現は、かなりうまく作られています

実際にいくつかの退職給付金系、失業保険サポート系のサイトを見ると、表現が非常に巧妙です。

こういう見せ方をされると、「知らないと損をする制度なのかな」と感じる人もいるでしょう。

ただ、ここで注意したいのは、「一括で数百万円が振り込まれるわけではない」という点です。

多くの場合、毎月の給付を長期間受け取った場合の合計額を、大きく見せています。

あるサイトの表現を見ると、「420万円受け取れることになった」と書いています。「420万円受け取れた」ではないのです。つまり、すぐに420万円が振り込まれるということではないのです。

場合によっては1年、2年近い期間をかけて受け取る可能性があるという話です。

本当に怖いのは「不正受給」に巻き込まれることです

ここが一番伝えたいことです。

制度そのものは悪くありません。

傷病手当金も失業保険も、必要な人を支えるための大事な公的制度です。

でも、事実と違う内容で申請したら、不正受給になります。

労働局なども、虚偽の診断書や事実と異なる申告を行うと、不正受給となり、返還や罰則の対象になると注意喚起しています。

たとえば、本当は働ける状態なのに、「働けない」と申告する。

本当は病気ではないのに、メンタル不調を大きく見せて診断を受ける。

事業者から「こう言えば通りやすいです」と言われて、事実と違うストーリーを作る。

こういう方向に進むと、かなり危ないです。

申請したのは本人です。

あとで問題になったときに、「業者に言われたからです」では済まない可能性があります。

「心身に疲れを感じている」という表現にも注意です

退職給付金系の広告では、受給要件として「今の仕事で心身に疲れを感じている」といった表現が使われることがあります。

もちろん、本当にパワハラや長時間労働で心身を壊しているなら、医療機関に相談して、必要な制度を使うべきです。

これは我慢する話ではありません。

でも、「疲れている」ことと、「医師が労務不能と判断する状態」は違います。

この境目をあいまいにしたまま、「お金がもらえる可能性があります」と誘導されるのは危険です。

特にメンタル不調は、血液検査のように数値で一発判定できるものではありません。

だからこそ、制度の悪用につながりやすい余地があります。

ここを業者がビジネス化しているように見える場合は、かなり慎重に見た方がいいです。

「最大28ヶ月」「数百万円」の裏側にあるもの

退職給付金系の広告では、「最大28ヶ月」「最大400万円」「最大500万円」といった数字が出てきます。

こういう数字を見ると、退職後の不安が少し軽くなるように感じますよね。

でも、その期間中、基本的には「働けない状態」「求職活動中の状態」など、制度ごとの条件を満たし続ける必要があります。

傷病手当金は、病気やケガで働けないことが前提です。

失業保険は、働く意思と能力があり、仕事を探していることが前提です。

つまり、「お金を受け取りながら、すぐ次の仕事を始める」という話ではありません。

働き始めれば、当然ながら給付は止まる場合があります。

それなのに、先に高額なサポート料金を払ってしまうと、「思ったより受給できなかった」「手数料の方が重かった」ということも起こりえます。

国民生活センターも、失業保険の申請サポートに関する相談件数が2021年度42件、2024年度217件、2025年度は10月31日までで216件に増えているとして注意喚起しています。

では、本当に会社がつらい人はどうすればいいのか

ここで誤解してほしくないのは、「制度を使うな」という話ではないことです。

本当に体調を崩しているなら、制度は使ってください。

会社のパワハラや過重労働で心身を壊しているなら、まず医療機関に行ってください。

そして、退職する前に、以下のような公的な窓口に相談しましょう。

  • ハローワーク。
  • 加入している健康保険の窓口。
  • 協会けんぽや健康保険組合。
  • 信頼できる社労士。
  • 消費生活センター。

制度は、公的機関に聞けば教えてくれます。

わざわざ高額な民間サポートを使わなくても、必要な手続きは確認できます。

特に傷病手当金は、退職後に初めて病院へ行けばいいというものではありません。

退職前の状態や退職日の扱いが重要になることがあります。

だからこそ、辞める前に確認することが大事です。

退職給付金広告を見たときのチェックポイント

退職給付金系のサイトを見たら、次のポイントを確認してください。

  • 「退職給付金」という公的制度があるかのように見せていないか。
  • 「最大〇〇万円」だけを大きく出していないか。
  • 一括でもらえるように誤解させていないか。
  • 受給までの期間や、働けない期間の説明が十分か。
  • 医療機関の紹介や診断の受け方を強く押していないか。
  • 不正受給になった場合の責任について説明しているか。
  • 料金体系、解約条件、返金条件が明確か。
  • 公的機関への相談より、LINE登録や説明会参加を強く誘導していないか。

このあたりに違和感があるなら、いったん離れてください。

焦って申し込まない方がいいです。

まとめ。退職給付金という言葉に飛びつかないでください

「退職したら数百万円もらえる」と聞くと、心が動くのはわかります。

仕事がつらい。

貯金がない。

家族がいる。

転職先も決まっていない。

そういう状況だと、甘い言葉にすがりたくなるものです。

でも、「退職給付金」という名前の公的制度はありません。

実態は、傷病手当金や失業保険などの制度を組み合わせた話であることが多いです。

そして、事実と違う申請をすれば、不正受給として本人が責任を問われる可能性があります。

本当に体調が悪い人は、制度を正しく使いましょう。

でも、「お金を増やすために病気ということにする」という方向に進んではいけません。

退職前後のお金が不安なら、まずはハローワーク、健康保険の窓口、消費生活センター、信頼できる社労士に相談してください。

よくわからない民間サービスに、いきなり申し込まないでください。

退職は人生の大きな判断です。

不安なときほど、派手な広告ではなく、公的な情報に戻りましょう。

コツコツ、正しい手順で進めていきましょう。

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