急に仕事ができなくなった社員は、精神疾患かもしれません。飲みに連れて行く前に、病院を勧めてください。
メンタル不調で休む方が、多くの会社で増えています。
令和6年の労働安全衛生調査に、数字があります。
メンタル不調で連続1か月以上休業した、または退職した労働者がいた事業所は12.8%でした。
適応障害、うつ病と、病名はいろいろあります。
ただ、会社の現場で困るのは、病名の前の段階です。
メンタル不調なのか、単にパフォーマンスが低いだけなのか。
この境目が分からず、会社が対応を誤ってしまうことがあります。
今日は、この話をします。
先に結論を言っておきます。
会社がやるべきなのは、元気づけることではなく、病院を勧めることです。
見分ける物差しは、今までとの差です。
パフォーマンスが低い社員は、どの会社にもいます。
その人が、精神疾患にかかっている、あるいはその兆候があるのか。
見るところの一つ目は、今までとの差です。
今までできていたのに、急にパフォーマンスが落ちてきた。
急にミスが増えてきた。
「今までそういうことをする人じゃなかったのに」
こう感じたら、注意が必要です。
勤怠と体調と、業務の申し出も兆候です。
二つ目は、勤怠の状況です。
欠勤が増えてきた、遅刻が増えてきた。残業を行わなくなってきた(業務はあるのに)。
これもメンタル不調の兆候です。
三つ目は、体調が悪そうに見えること。
四つ目は、業務についての申し出です。
「もっと簡単な仕事に変えてもらえませんか」
こういう業務や異動の申し出があったときも、メンタル不調を疑わないといけません。
厚生労働省のメンタルヘルス指針のパンフレットにも、「いつもと違う」部下の様子が列挙されています。
遅刻や早退や欠勤が増える、仕事の能率が悪くなる、ミスや事故が目立つ、といった例です。
大切なのは「いつもと違う」に早く気づくことだ、という趣旨です。
もともとパフォーマンスが低い人も、放っておけません。
「あの人は何年経っても変わらないな」
もともとパフォーマンスが低い方は、たしかにパフォーマンスが低いだけかもしれません。
でも、疑う必要がない、ということでは決してありません。
パフォーマンスが低ければ、社内の評価も低い状態が続きます。
それ自体がストレスになって、だんだんと心を病んでいくことがあります。
メンタル不調ではない方も、不調にならないようにケアしていく必要はあります。
そのうえで、急にパフォーマンスが落ちた方がいれば、まず注意してください。
「大丈夫か、飲みに行くか」は、失敗の代表例です。
兆候が見える方がいたとして、会社はどうすべきか。
ここで一番重要なのは、メンタル不調を疑えるかどうかです。
ミスが増えた、欠勤が増えた、遅刻が増えた、体調も悪そうだ。
こういう社員に対して、多くの会社は人事面談をします。
「大丈夫か、最近元気なさそうだぞ」
そして、こう続きます。
「一緒に飲みに行くか」
飲みに行ったら元気が出るんじゃないか、という発想です。
これは、失敗の代表例だと思います。
たまたま業務でミスをして落ち込んでいる方なら、飲みに行くのはいいでしょう。
プライベートで辛いことがあって落ち込んでいる方も、そうかもしれません。
でも、メンタル疾患が疑われる方には、まったく効果がありません。
異動や業務の軽減だけでも、配慮したとは言えません。
面談のほかに、異動させてあげる。
業務を軽減させてあげる。
こういう対応をしている会社もあると思います。
良かれと思って、元気づけるために何かしてあげたい。
その気持ち自体は、否定しません。
ただ、それだけで終わってしまうと、メンタル不調の対策としてはほとんど意味がありません。
会社として配慮をきちんとした、とは言えないのです。
安全配慮義務という言葉があります。
労働契約法には、使用者は労働者が生命や身体の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をするものとする、と定められています。
健康状態の悪化に気づいたあと、何をしたか。
問われるのは、そこです。
病気の判断は、会社にはできません。
では、何をするか。
一番大事なのは、この一言が言えるかどうかです。
「一度、病院に行ってきたらどうですか」
精神科と言うと、響きが重いと感じる方もいます。
メンタルクリニックや心療内科で、一度診てもらったらどうか。
そういう言い方でかまいません。
これが言えない会社が、まだまだ多いような気がしています。
先ほどの厚生労働省のパンフレットにも、こう書かれています。
背後に病気が隠れている可能性があるが、病気の判断は管理監督者にはできない。
それは産業医か、それにかわる医師の仕事である。
こういう趣旨の記載です。
上司や社長が「病気ではなさそうだ」と判断すること自体が、危ないのです。
診断書が出たら、その内容に沿って働かせます。
安全配慮義務をきちんと果たしていたか、と問われたとき。
見られるのは、病院に行かせることができていたか。
そして、その診断結果に基づいて勤務させていたか、です。
心療内科やメンタルクリニックに行くと、1か月くらい休みましょう、という診断書が出てくることは多いです。
出たら出たで、まずは1か月なら1か月、診断に従って休ませてあげてください。
休んだあとの復職の場面は、別の記事に書きました。
治っていないのに復職しようとする人がいます。焦らせているのは、会社の制度かもしれません。
診断書をもらい、その内容に沿って働かせる。
会社が病気を判断するのではなく、医師の判断に乗ることが、会社を守ります。
お腹が痛い人に、気合だとは言いません。
心の病気として考えると、なんとなく分かりづらいと思います。
一番分かりやすいのは、体の病気と同じだと考えることです。
何週間も何か月も、ずっとお腹が痛いと言っている方がいたらどうしますか。
お腹が痛くて遅刻したり、パフォーマンスが落ちたりしている方です。
「お腹痛いか、気合だ、一緒に飲みに行くぞ」
たぶん、言わないと思います。
話を聞いてあげるよ、とも言わないでしょう。
お腹が痛いなら病院に行ってきたらどうか、と言うはずです。
心の病気も、同じです。
体の病気と心の病気を一緒に考えると、対応策が見えてきます。
まとめ
急にパフォーマンスが落ちた社員は、精神疾患かもしれません。
物差しは、今までとの差です。
欠勤や遅刻の増加、体調の悪さ、簡単な仕事への変更の申し出も兆候です。
もともとパフォーマンスが低い人も、放っておくと心を病むことがあります。
「大丈夫か、飲みに行くか」は、メンタル疾患が疑われる人には効きません。
異動や業務軽減だけで終わると、配慮したとは言えません。
電通事件では、健康悪化に気づいた後に業務量を調整しなかったことが問われました。
病気の判断は、会社にはできません。
だから「一度、病院に行ってきたらどうか」と言ってください。
診断書が出たら、その内容に沿って休ませ、働かせてください。
お腹が痛い人に気合だとは言わないのと、同じことです。
働き方をアセントさせる一歩は、心の病気を体の病気と同じ目で見ることだと思います。
こうした労務の話は、公式LINEでも配信しています。
ご登録いただいた方には、就業規則のチェックリストをお渡ししています。