平時の対応

待遇差の説明は、契約書に人事部と書いても、店長に聞かれます。店長が答える範囲を、先に決めてください。

2026.09.14
待遇差の説明で店長が答える範囲を先に決める

今日は、同一労働同一賃金の続きの話をします。

前回は、待遇差を職務・責任・配置転換の3つで説明する、という話をしました。

今回は、少し実務寄りです。

その説明を、誰が、どこまでするのか。

2026年10月1日から、待遇差の説明を求めることができる旨を、雇用契約書に書くことになります。

書けば、聞かれます。

そのとき、誰が答えるのかを深掘りします。

契約書には、人事部と書くことになります。

まず、誰が、のところです。

厚生労働省のモデル労働条件通知書には、説明を求める窓口を書く欄があります。

部署名、担当者職氏名、連絡先です。

モデル労働条件通知書(厚生労働省)

記載要領には、申出先を特定できるように書けば足りる、という趣旨の記載があります。

担当者の名前までは、普通は書かないと思います。

その人が辞めたり、異動したりすることがあるからです。

人事部と連絡先を書く、という会社が多いと思います。

ただ、それだけで済ませてしまうと、少しまずいです。

アルバイトは、契約書の窓口に連絡しません。

そう書いたとしても、です。

雇用契約書の細かいところまでアルバイトが読むかというと、正直、怪しいです。

待遇差を説明してほしいと思ったときに、わざわざ人事部に連絡してくれるか。

そこまでする人は、少ないと思います。

「そんな真面目なアルバイトはいませんよ」

こういう感じではないでしょうか。

だとすれば、10月以降に実際どうなるかを予測して、対策を打っておくことが大事です。

問い合わせは少ないかもしれません。でも、ゼロではありません。

説明してほしいという人が、どれだけ出てくるのか。

これも、怪しいところです。

あまり出てこない会社が、ほとんどだと思います。

ただ、アルバイトがある程度の人数いると、法改正に敏感な人が1人か2人は出てきます。

そういう人は、いい意味で、法律に詳しかったり、興味を持っていたりします。

その人にきちんと説明できるかどうかが、大事です。

説明できなかったとなると、その人にとっては大きな不信につながります。

「この会社、法律対応を全然していないんだ」

こう思われてしまうと、モチベーションが下がります。

最悪の場合は、退職につながります。

法律に詳しくない人から見れば、大したことではないでしょ、と思われるかもしれません。

そうではありません。

問い合わせはそれほどないかもしれませんが、ゼロではない可能性が高いです。

会社としては、まず説明できる体制を整えておくことです。

聞かれるのは、身近な社員と店長です。

では、アルバイトは誰に説明を求めるのか。

身近な人です。

一番仲良くしている社員か、店舗を展開している会社なら、その店の店長です。

アルバイトにとって、一番偉い人は店長です。

その上にエリアを統括する人や本社の人がいても、遠い存在です。

話したこともない人に、直接聞くのはハードルが上がります。

人事部も、まさに本社の人です。

だから、聞かれるのは店長と身近な社員になります。

契約書の問い合わせ先を人事部にしたからといって、店長や社員に何も教育しなくていいわけではありません。

どういう教育を、どこまでするのか。

これが、次の課題です。

「全部、人事部に回して」は、勧めません。

一番手間をかけずに済ませるなら、こうなります。

アルバイトから問い合わせがあったら、安易に答えず、人事部に連絡するように伝えてください。

店長や社員が余計なことを言わないので、会社のリスクは最小限に抑えられます。

確実といえば、確実です。

ですが、私はあまりお勧めしません。

店長や社員がこの内容を全く知らなくていいかというと、それは違う気がするからです。

「この店長、こんなことも答えられないんだ」と思われてしまいます。

これはこれで、アルバイトの不信感につながります。

現場が答える範囲を、限定列挙で決めてください。

とはいえ、例えば、家族手当の差は合理的な説明が難しい手当です。

店長に合理的な説明をさせるのは、それはそれで無理があります。

一方で、説明できる差もあります。

正社員とアルバイトで、なんで基本給が違うんですか。

店長には役職手当がついているのに、なんで私にはつかないんですか。

これは、職務の内容や責任の程度で合理性がある差です。

この程度のことは、現場で答えられるようにしておきましょう。

ここまではちゃんと答えてくださいね、と線を引く。

それ以上のことを聞かれたら、人事部に連絡してください、とする。

答えることは限定列挙です。

これとこれとこれは答えてね、それ以外は人事部で、という決め方です。

実際の文案は、後ろに載せます。

答えていいところを決めておけば、教育もそこだけで済みます。

大きな事故にはつながらないと思います。

ガイドラインの細かいところまで店長や社員に理解させるのは、なかなか大変です。

理想かもしれませんが、そこは目指さなくていいです。

家族手当の差を聞かれたら、これはもう人事部案件です。

現場の店長に答えさせる必要は、ないと思います。

アルバイト同士の待遇差は、現場で答えてください。

もう1つ、押さえておいてほしいことがあります。

同一労働同一賃金の話は、あくまで正社員とアルバイトの待遇差です。

パートタイム・有期雇用労働法の説明義務も、通常の労働者との間の待遇の相違について、という作りになっています。

パートタイム・有期雇用労働法 第14条(法令検索)

正社員同士の待遇差や、アルバイト同士の待遇差は、含まれません。

例えば、アルバイト同士で時給が違う場合です。

「同じような仕事をしているのに、なんで時給に100円の差があるんですか」

こういう問い合わせは、アルバイトが多い会社ほど出てきます。

これをいちいち人事部に回すと、人事部がパンクします。

アルバイト同士の差は、現場で答えてください。

これも、現場が答える内容に入れておいたほうがいいと思います。

人事部の負担が軽くなります。

店の側も、ここは店で答えないといけないんだな、と理解できます。

こういう通達を配っています。

限定列挙といっても、実物がないとイメージしにくいと思います。

店長向けの通達の文案を載せておきます。

会社ごとに手当の名前や理由は変わるので、〇〇のところは置き換えてください。

ここから文案です。

各店長 各位

2026年10月1日から、アルバイト・パートの雇用契約書が変わります。

正社員との待遇差について、説明を求めることができる旨が入ります。

契約書の問い合わせ先は本社人事部ですが、実際には店長のみなさんが聞かれることが多いと思います。

次のとおり、店で答えるものと、人事部に回すものを分けます。

店で答えるものは、次の3つです。

  1. 基本給の差。

正社員は〇〇(発注、シフト作成など)まで担当し、責任の範囲が違うから、と答えてください。

  1. 役職手当。

店長・副店長という役職に対して払う手当で、役職に就いていない人にはつかない、と答えてください。

  1. アルバイト同士の時給の差。

当店の時給表(経験年数、担当できる業務)に基づいて答えてください。

人事部に回すものは、上の3つ以外のすべてです。

特に、家族手当、住宅手当、賞与、退職金の差は、店で答えないでください。

「人事部の〇〇(電話番号〇〇)に連絡してください」と伝えてください。

「正社員のほうが偉いから」「アルバイトだから」という説明は、しないでください。

説明を求めたことを理由に、シフトを減らすなどの不利な扱いをすることは、法律で禁止されています。

以上です。

ここまでが文案です。

ポイントは、店で答える3つを先に書き、それ以外は全部人事部、と締めているところです。

店長に覚えてもらうのは、この3つだけです。

最後の1文は、パートタイム・有期雇用労働法14条3項の内容です。

説明を求めたことを理由にした不利益な取扱いは、店長にもしてほしくないので、通達に入れています。

まとめ

2026年10月1日から、待遇差の説明を求めることができる旨を雇用契約書に書くことになります。

モデル労働条件通知書には、窓口として部署名・担当者職氏名・連絡先を書く欄があります。

申出先を特定できれば足りるので、人事部と連絡先を書く会社が多いと思います。

ただ、アルバイトは契約書の窓口に連絡しません。

聞くのは、身近な社員と店長です。

問い合わせは少ないかもしれませんが、法改正に敏感な人が1人か2人は出てきます。

その人に説明できないと、不信につながります。

全部人事部に回す、という決め方は勧めません。

店長が何も答えられないことが、別の不信を生むからです。

現場が答える範囲を、限定列挙で決めてください。

基本給や役職手当の差は、現場で答える。

家族手当の差は、人事部に回す。

アルバイト同士の待遇差は、同一労働同一賃金の対象外なので、現場で答える。

誰が、どこまで答えるのかを、社内で整備しておいてください。

働き方をアセントさせる一歩は、店長が答える3つと、人事部に回す1つを、先に決めておくことだと思います。

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