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2026年度の最低賃金は全国平均1,176円へ。月給の正社員が最低賃金を割っていないか確認してください。

2026.07.30
2026年度の最低賃金と月給制正社員の確認ポイント

今年の最低賃金の目安が決まりました。

ニュースでも取り上げられていましたので、目にされた方も多いと思います。

ただ、この話でいちばん見落とされやすいのは、時給で働く人の話ではありません。

月給で働く正社員が、最低賃金を割っていないかどうかです。

ここを確認していない会社が、まだあります。

今回は、今年の目安を整理したうえで、月給のチェック方法まで書いていきます。

今年の目安は「55円引上げ・全国平均1,176円」です。

中央最低賃金審議会は2026年7月28日、令和8年度の地域別最低賃金の目安を答申しました。

全国加重平均で55円の引上げ、金額は1,176円。

引上げ率は4.9%です(令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について|厚生労働省)。

ランク別の目安額は、次のとおりです。

・Aランク(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪):54円
・Bランク(28道府県):56円
・Cランク(13県):56円

大都市圏のAランクが54円、それ以外が56円です。

金額が大きい地域の引上げ幅をあえて抑えて、地域差を縮めにいく形になっています。

なお、今年は労使の意見が一致しませんでした。

そのため、この目安は公益委員の見解として取りまとめられ、各地方の最低賃金審議会に示されています。

引上げ率が前年を下回るのは、6年ぶりです。

4.9%と聞くと、それでも高い水準です。

ただ、去年より「伸びが縮んだ」という点が、今年の特徴です。

全国加重平均の引上げ率の推移を並べてみます。

・2020年度:+1円(0.1%)
・2021年度:+28円(3.1%)
・2022年度:+31円(3.3%)
・2023年度:+43円(4.5%)
・2024年度:+51円(5.1%)
・2025年度:+66円(6.3%)
・2026年度(目安):+55円(4.9%)

コロナ禍の2020年度に事実上据え置きとなったあと、5年連続で引上げ率が上がり続けてきました。

2025年度の6.3%は、1980年度の7.0%に次ぐ、過去2番目の水準です。

その流れが、今年はじめて止まりました。

引上げ率が前年を下回るのは、2020年度以来6年ぶりです。

「5%を切るのが久しぶり」という言い方も見かけますが、正確には少し違います。

4.9%より低かった年は2023年度(4.5%)ですから、5%割れ自体は3年ぶりです。

6年ぶりなのは、「前年より伸びが縮んだこと」のほうです。

背景には、政府目標の見直しがあります。

「2020年代に全国平均1,500円」という目標は、達成時期を2030年代前半に先送りする案が浮上していると報じられています(時事通信 2026年6月26日)。

現在の1,121円から2029年までに1,500円へ届かせるには、毎年7%超の引上げが必要でした。

そこに現実路線への修正が入った、という位置づけです。

ただ、経営者として押さえておきたいのは逆の見方だと思います。

伸びは縮んだが、上がる流れそのものは終わっていません。

4.9%は、依然としてかなりの上昇率です。

大阪は1,231円になる見込みです。

当事務所のある大阪の現在の最低賃金は1,177円です。

2025年10月16日発効で、前年の1,114円から63円上がりました(大阪府最低賃金|門真市)。

大阪はAランクですから、今回の目安は54円。

目安どおりに決まれば、1,177円 + 54円 = 1,231円です。

1,231円。

感覚的には、随分と高くなったなと感じます。

ただ、この目安はあくまで参考値です。

最終的な金額は、これから各都道府県の地方最低賃金審議会で決まります。

発効するのは、例年10月ごろです。

発効日は都道府県ごとに違いますので、そこも確認が必要です。

ちなみに大阪労働局の推計では、2025年の改定で影響を受ける労働者は約38万9,000人。

大阪府内の労働者の約3割にあたります。

「うちには関係ない」と思っている会社ほど、確認したほうがいい規模の話です。

20数年で、時給は倍近くになりました。

私は学生の頃、ドラッグストアでアルバイトをしていました。

20数年前です。

そのときの時給が680円でした。

時給1,000円のバイトというと、「めちゃくちゃ大変な仕事」という印象がありました。

それが今、最低賃金で1,231円になろうとしています。

680円から1,231円ですから、ほぼ倍です。

一方で、正社員の基本給が同じように倍になったかというと、そうではありません。

ここにギャップがあります。

「最低賃金は上がっているのに、正社員の給与はあまり上がっていない」

そう感じている会社は、実際にあると思います。

もちろん、下から底上げされていく過程ですから、ギャップがゼロであるべきという話ではありません。

ただ、放置していると次のような問題が起きます。

注意が必要なのは、時給で働く人だけではありません。

最低賃金の話は、どうしても時給の話として報じられます。

ここが落とし穴です。

最低賃金は、日給でも月給でも、年俸でも適用されます。

給与の支払形態は関係ありません。

日給の場合を計算してみます。

1日8時間勤務で、大阪の1,231円を前提にすると、1,231円 × 8時間 = 9,848円

これが日給の下限になります。

「日給9,000円」だと、割っています。

そして、より見落とされやすいのが月給です。

月給の最低ラインは、年間休日数で変わります。

月給が最低賃金を上回っているかは、時間額に換算して比べます。

計算方法は決まっています。

月給制の時間換算額 =(基本給 + 諸手当)÷ 1か月平均所定労働時間数

そして、1か月平均所定労働時間数は次の式で出します。

(365日 - 年間所定休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12

賃金形態ごとの時間換算額の算定方法|和歌山労働局

ここで重要なのは、分母が会社ごとに違うということです。

年間休日が少ない会社ほど、月の労働時間が長くなります。

つまり、同じ月給でも時間額が下がります。

大阪の1,231円(予定額)で試算してみます。

年間休日105日・1日8時間の場合
(365 - 105)× 8 ÷ 12 = 173.3時間
1,231円 × 173.3時間 ≒ 21万3,400円

年間休日120日・1日8時間の場合
(365 - 120)× 8 ÷ 12 = 163.3時間
1,231円 × 163.3時間 ≒ 20万1,100円

年間休日105日というのは、週40時間の上限に近い水準です。

この会社では、月給21万3,400円が最低ラインになります。

一方、完全週休2日+祝日で年間休日120日の会社なら、20万1,100円です。

同じ「最低賃金1,231円」でも、月給のラインは1万2,000円以上違います。

「月給◯◯万円ならセーフ」という一律の答えはありません。

自社の年間休日から計算してください。

「初任給20万円」は、もう最低賃金を割ります。

ここで、経営者の感覚のズレが出てきます。

私が学生だった20数年前、正社員の初任給は18万円や19万円がザラにありました。

20万円いっていたら「いいな」という感覚です。

22万円、23万円を出す会社があれば「ここはかなりいい」と思っていました。

その感覚が、そのまま残っている方がいます。

「初任給は20万円くらいでいいんじゃないか」

これは、地域によってはもう最低賃金を割ります。

先ほどの計算どおり、大阪で年間休日105日なら、下限は21万3,400円です。

初任給20万円では違反です。

実際の相場も、そこにはありません。

令和7年賃金構造基本統計調査では、大学卒の初任給は平均26万2,300円。

前年比5.6%増で、はじめて26万円台になりました。

企業規模10〜99人の会社でも24万2,400円です(賃金構造基本統計調査(初任給)結果の概要|厚生労働省)。

法律の下限が21万円台、中小企業の実勢が24万円台。

この2つを知らずに20万円で募集をかけても、応募は来ません。

法令違反のリスクと、採用できないリスクが同時に来ます。

算入できる手当と、できない手当があります。

月給で比べるときに、もうひとつ注意点があります。

すべての手当を足して計算してよいわけではありません。

最低賃金法4条3項と同法施行規則により、次のものは算入しません。

・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
・時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金
・精皆勤手当
・通勤手当
・家族手当

残業代が入らない、というのは重要です。

残業代を含めれば足りている、では通りません。

所定労働時間分の賃金だけで比べます。

一方で、除外リストに載っていない手当は算入します。

役職手当、資格手当は算入します。

そして、間違いやすいのが住宅手当です。

通勤手当や家族手当は除外されますが、住宅手当は除外リストにありません。

住宅手当は、算入します。

「生活関連の手当だから外すのだろう」と考えると、逆になります。

除外されるのは「精皆勤手当・通勤手当・家族手当」の3つだと、条文で押さえておくのが確実です。

違反すると、50万円以下の罰金です。

最低賃金を下回った場合、使用者は50万円以下の罰金となります(最低賃金法40条)。

行為者だけでなく、法人にも科されることがあります(同法42条)。

そして、罰則よりも実務上の負担が大きいのは、差額の支払いです。

最低賃金を下回る部分は無効になり、最低賃金額まで引き上げられたものとして扱われます。

つまり、遡って差額を払うことになります。

対象者が複数いれば、金額はまとまります。

「知らなかった」では済みません。

さらに、採用面でも効いてきます。

正社員の月給がアルバイトの時給換算を下回っていれば、こう思われます。

「これなら、アルバイトのほうがいいのではないか」

責任だけ重くて、給与が下回っている。

その状態では、人は集まりませんし、残りません。

国の周知も、時給だけでは足りないと思います。

ここからは私の意見です。

毎年、最低賃金のポスターが出ます。

芸能人の写真とともに、時給の金額が大きく書かれているものです。

あれは目に入りやすくて、いい取り組みだと思います。

ただ、時給だけを大きく出しても、片手落ちではないでしょうか。

日給ならいくら、月給ならいくら。

そこまで併記してほしいと思っています。

もちろん、月給は年間休日数によって変わりますから、一律の数字は出せません。

それでも、「1日8時間なら日給◯◯円以上」「年間休日105日なら月給◯◯円以上」という目安があれば、伝わり方は変わるはずです。

時給の数字だけが独り歩きすると、月給の会社は自分の話だと思いません。

そこが、今回いちばん言いたかったところです。

発効までに、この3つを確認してください。

目安が出た今の段階で、やっておくことがあります。

1. 自社の1か月平均所定労働時間を計算する

年間所定休日数を確定させて、(365 - 休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12 を出します。

この数字がないと、月給の判定ができません。

2. 全従業員を時間額に換算して比べる

時給者だけでなく、日給者、月給者、正社員も対象です。

算入しない手当を除いて計算します。

特に、いちばん給与が低い層と、直近の新卒・中途採用者を先に見てください。

3. 給与規程と求人票を直す

賃金テーブルの下限、初任給の設定、求人票の記載。

ここが古いままだと、発効後に一斉に違反状態になります。

なお、賃金引上げに合わせて設備投資をする中小企業向けに、業務改善助成金という制度があります。

令和8年度は9月1日から申請開始とされており、申請期限は地域別最低賃金の発効日前日または11月末の早い方とされています。

つまり、発効してから動くと間に合いません。

活用を考えるなら、金額が確定する前から準備を始める必要があります。

要件や上限額は年度ごとに変わりますので、厚生労働省の公式情報で必ず確認してください。

まとめ

2026年度の最低賃金は、全国加重平均で55円上がり、1,176円になる見込みです。

引上げ率は4.9%。

前年より伸びは縮みましたが、それは6年ぶりのことで、上がる流れは続いています。

大阪はAランクで54円の目安ですから、1,177円から1,231円になる見込みです。

そして、確認すべきは時給者だけではありません。

日給なら、1,231円 × 8時間 = 9,848円。

月給なら、(365 - 年間所定休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12 で時間数を出して割ります。

年間休日105日の会社なら、月給21万3,400円が下限です。

「初任給20万円」という感覚は、もう通用しません。

大学卒の初任給は、統計でも平均26万2,300円まで来ています。

算入できない手当(残業代・通勤手当・家族手当・精皆勤手当)にも注意してください。

住宅手当は算入する、という点は特に間違いやすいところです。

10月の発効までに、時間はまだあります。

金額が確定してから慌てるのではなく、目安が出た今のうちに計算しておきましょう。

働き方をアセントさせるために、まずは自社の下限を数字で把握することからです。

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